代表的で、彼女のアーティストとしての歩みを語る上で欠かせない楽曲をピックアップ
「Good Day (좋은 날)」 (2010年)
解説: この曲はIUさんの人気を決定づけた、まさにブレイクスルーとなった一曲です。明るくキャッチーなメロディと、好きな人に告白したいけれど勇気が出ない、少女の甘酸っぱい気持ちを歌った歌詞が多くの共感を呼びました。
音楽的特徴: 最大の聴きどころは、曲のクライマックスで披露される「3段ブースター」と呼ばれる3段階にわたるロングトーンの高音です。
これは彼女の高い歌唱力を世に知らしめるきっかけとなり、多くの人が彼女の歌声に驚きました。オーケストラサウンドを取り入れた華やかなアレンジも特徴です。
ボイストレーナー視点: この「3段ブースター」は、正確なピッチコントロールと安定した声帯の維持、そして十分な肺活量がなければ不可能です。彼女の技術力の高さを証明するパートと言えます。
「You & I (너랑 나)」 (2011年)
解説: 「Good Day」のヒットを受けてリリースされ、こちらも大ヒットを記録しました。「Good Day」の続編とも言えるような、ファンタジックで少し切ない世界観を持っています。タイムマシンに乗って未来へ行き、大人になった自分と好きな人に会いに行くというストーリー性の高い歌詞が特徴です。
レッスンでも大人気の曲です
音楽的特徴: 前作同様、オーケストレーションを駆使した壮大なサウンドが印象的です。メロディはより複雑でドラマティックになり、IUさんの表現力の幅広さを示しました。
ボイストレーナー視点: リズミカルな部分と、伸びやかに歌い上げる部分の緩急の付け方が見事です。物語を語るような表現力が求められる楽曲です。
「Through the Night (밤편지)」 (2017年)
解説: IUさん自身が作詞を手掛けた、アコースティックなフォークバラードの名曲です。「愛している」という言葉では伝えきれない深い愛情を、夜に書く手紙に喩えて歌っています。派手さはありませんが、心に深く染み入るような温かさと切なさを持っています。
音楽的特徴: アコースティックギターの繊細なアルペジオに乗せて、IUさんの透明感のある声が最大限に活かされています。派手な技巧を前面に出すのではなく、言葉一つひとつを大切に、丁寧に歌い上げています。
ボイストレーナー視点: まるで耳元で囁くような、繊細な息遣いと声のコントロールが素晴らしいです。過剰なビブラートなどをかけず、ストレートな声で感情を伝える技術の高さが光ります。リスナーに安心感を与えるような歌声です。
「Palette (팔레트) (Feat. G-DRAGON)」 (2017年)
解説: 25歳になったIUさんが、自身の好みや考え方の変化、そして大人になることへの戸惑いと肯定を素直な言葉で歌った曲です。同世代のリスナーから大きな共感を得ました。BIGBANGのG-DRAGONさんがフィーチャリングとして参加し、ラップで「大人」としての視点からアドバイスを送る構成も話題となりました。
音楽的特徴: シンセポップを基調とした、心地よく洗練されたサウンドです。IUさんの柔らかく落ち着いたトーンの歌声と、G-DRAGONさんの個性的なラップが見事に融合しています。
ボイストレーナー視点: 力むことなく、自然体で語りかけるような歌い方が印象的です。自分の内面を表現するのに適した、リラックスした発声が良い効果を生んでいます。
「Blueming」 (2019年)
解説: 好きな人とのメッセージのやり取りにおける高揚感や不安感を、青いバラ(Blue Rose)が咲く(Blooming)様に喩えた、言葉遊びのセンスが光る楽曲です。IUさん自身が作詞を手掛けています。
音楽的特徴: エレクトロニックなサウンドとロックなバンドサウンドが融合した、軽快で疾走感のあるポップロックナンバーです。リズミカルでキャッチーなメロディラインが特徴です。
ボイストレーナー視点: リズム感が非常に重要となる楽曲です。言葉をリズミカルに、かつ明瞭に発音する技術が求められます。弾むような歌い方が、曲の持つワクワク感を増幅させています。
「eight (에잇) (Prod.&Feat. SUGA of BTS)」 (2020年)
解説: BTSのSUGAさんがプロデュースとフィーチャリングで参加したことで大きな話題を呼んだ楽曲です。「28歳」という年齢(韓国年齢)をテーマに、若さ、喪失感、そして繰り返される記憶などをモチーフにした、爽やかでありながらどこか切ない雰囲気を持っています。
音楽的特徴: バンドサウンドを基調とした、疾走感のあるポップロックです。IUさんのクリアなボーカルとSUGAさんの感傷的なラップが、楽曲の世界観を深めています。
ボイストレーナー視点: 伸びやかで開放感のあるサビの歌唱が印象的です。感情の起伏を声の強弱やトーンで巧みに表現しています。
「LILAC (라일락)」 (2021年)
解説: 20代最後となるアルバムのタイトル曲であり、華やかだった20代との別れと、新たな30代への期待感を「ライラックの花が散る、春の日の別れ」に喩えて歌っています。別れを悲しいものとしてだけでなく、祝福として捉える前向きなメッセージが込められています。
音楽的特徴: 70~80年代のディスコサウンドを彷彿とさせる、ファンキーで軽快なリズムが特徴的なシティポップ風の楽曲です。
ボイストレーナー視点: リズムに乗って軽やかに歌うグルーヴ感が重要です。ファルセットを効果的に使い、華やかで明るい雰囲気を演出しています。
これらはIUさんのヒット曲のほんの一部ですが、彼女の音楽性の幅広さや、アーティストとしての成長を感じていただけるかと思います。どの曲も彼女の素晴らしい歌声と表現力を堪能できる名曲ばかりですので、ぜひじっくり聴いてみてください。